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「はいはーい、イチャイチャするのはそこら辺にして、そろそろ陣地に向かうよ」
「「イチャイチャしてないッ!!」」
条件反射というものだろう。
蒼井に対して息ぴったりに同じことを水波と白井は言う。それを見て、蒼井は相も変わらずクスクスと笑えば、蒼井の隣に人がいることに気付いた。
「蒼井、誰だよソイツ」
「ん?あぁ、白井に是非とも会ってみたいという言うから連れてきたんだよ」
俺に?
その男も武士のようだった。
蒼井と違って、ニコニコ笑ってなどおらず、どこか仏頂面で白井を見てくる。
「あぁ、もしかして、蒼井と仲が良いっていう、水波の家来?」
「自己紹介したら?呉羽?」
呉羽?それが、この男の名前なのか。
それって、下の名前、だよな。
「木村呉羽っていいます。白井さんのお話はかねがね伺ってます」
「へぇー、そりゃ驚いた。蒼井が他人に俺の事を話すなんてなぁ」
茶化すように言ってみせれば、呉羽はあまりよい顔はせず、機嫌が悪そうに白井の前に手を出した。
「それで?俺のどういった話を聞いてるのかな?」
と、笑いながら言い、差し出された手を握れば、水波は明らかに表情を変えた。
「怪我をしたら、白井さんの元へ行けと飽きるくらいに言われてますよ。
なので私個人でも貴方のこと、調べさせて頂きました」
自分のことを調べて貰うというのは、あまり良い気はしなかった。
後ろめたい気持ちがあるわけではないが、どうしても生理的に厳しいものがあった。
「それで?」
手を離し再び聞き返す。
「武士になりたいそうですね。
やはりその理由は、水波様をお守りしたいからですか?」
そんなことを言われ、不覚にも戸惑ってしまう。
コイツは何を言っているのだ、と。
だけど、今更隠しても仕方がなかった。
「そうだとしたら?」
「私が守るので安心してください、と。
そう伝えたかったのです。大切な人を守りたい気持ちは私にも分かりますから」
その時初めて呉羽はニコリと笑った。
それはもう、可愛らしい笑顔で。
だけど、
「はあ?」
と返してしまう。
「自分で守らなきゃ意味がねぇ。
別に呉羽殿達の腕を馬鹿にしてる訳じゃねぇが、大切な奴だったら自分で守りたいに決まってるだろ。それによ、俺は守られるってのが性に合わねぇ。それだけだ」
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