高鳴り

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「っはは、とんだ勇ましい殿方だ。蒼井が気に入るのもなんとなく分かります」 「呉羽、そろそろ行かないと」 戦前だからこそのほのぼの空間だった。 本来ならば周りから見れば、有り得ないことだろう。それこそ、水波の言う緊張感を持てと言わんばかりのことだ。 でも、 これがきっと、俺達のスタイルなのだろう。 呉羽は白井と水波に一礼し、蒼井と一緒にこの場を後にした。 水波を見れば、相も変わらずソワソワしていて、なにがしてぇんだと、言ってやりたくもなる。 「なに?」 「あ、いや……大切な人…とか、なんとか……」 だから、良くもまあ、そんなことが聞けるなとつくづく思う。 水波の頭を撫でて誤魔化せば、水波は不満そうな顔をしたが時間切れだ。 警鐘が鳴り響いたのだ。 それに気づけば、いそいそと皆屋敷から飛び出し、自分達の陣地に行く。 その中でも最前線は一番忙しそうにしていた。まあ、それでも、白井や水波みたいに余りバタバタしていない人間もいたが。 「…水波、大丈夫だとは思うが死んだりするんじゃねぇぞ」 向かっている最中、少しでも心配ぐらいはしてやろうという考えから、そう言葉を白井は発した。 水波は「うん」と頷けば、「白井もね」とだけ言い、白井と水波は別れた。 死ぬ?そんなこと考えたことはなかったし、水波が居なくなるということも考えたことはなかった。 だけどやはり、少しだけ、「水波は大丈夫だろうか。大丈夫だよな?」と自分に言い聞かせてしまう。 幼馴染みなのだから心配して当然なのだが、もしかしたら俺は、水波にそれ以上の感覚を抱いているのではないだろうか、と自覚してきている。 お守りだって。 普段ならあんなものに目を止めない。 幼馴染み幼馴染み言っても、蒼井だって幼馴染みだし、付き合いだったら蒼井との方が長い。 それなのに俺は、蒼井のことよりも水波のことばかり心配しているのだ。 あのお守りにだって、本来ならば自分の欲望のことでも願うのかもしれない。 それなのに、 水波が無事に帰ってきますように。 などと、どこぞの女みたいなことを願ってしまった。 我ながら恥ずかしい。 俺は水波にどんな感情を抱いているんだ。幼馴染み以上の感情はなんなのだ。 俺は、 水波のことが好きなのか?
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