恋慕

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白井が睨んだ通り、戦が終わった晩は大雨が降った。 それでも家に帰れたのは、日付が変わってから数時間後で、白井は身も心も疲れ果てていた。 両親は重傷者に何かあっては困るからと、向こうで宿を取ると言っていた為、家には白井一人。 そのせいか、今日は物寂しく感じていた。 相変わらずの書物ばかりの部屋に雨音ばかりが聞こえており、ふと気づけば水波は大丈夫だろうかと考えていた。 一応水波は安静ということだが、あの水波が安静にするとは到底思いもしなかった。 家老だからと、なにかしらの責任を感じているのかもしれないし、 それに、 戦から帰ってきた時のアイツは様子がおかしかった。 俺も残れば良かった……と、思ってしまう。 それから数分後、 白井の家に訪ねてくる者がいた。 乱暴に家の扉を叩く音。 こんな夜更けに誰だよと思いながら扉を開ければ、その先に居たのは、 「水波!?」 「白井っ、なんで来ないんだ! ちゃんと来いと言ったろ!」 と、水波はいきなり怒鳴り散らしてくる。 それでも、腹には手を当て、挙げ句の果てには、ずぶ濡れだった。 思わず溜め息を吐きたくなるが、 白井は我慢し、水波の腕を掴んだ。 「来い」 「ちょ、おいっ」 お前の家に上がるつもりは無かったのにと言わんばかりの声。 腹を抑え、ずぶ濡れで、 そんな奴を黙って返す訳にもいかないだろう。 人の気も知らないで。 部屋に水波を押し込めば、適当なタオルを水波の頭に掛けた。 「その髪止め取れよ。 邪魔くせぇ」 「い、言われなくとも取るっ」 水波が髪止めを取れば、男とは疑いたくなるような髪の長さに容姿だった。 今更驚きもしないが、水波は美人だと思う。 そんな水波の頭を白井は拭いてやるのだ。
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