記憶

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また風が強く吹き、白井と水波の間に桜の花びらが通った。 今度は、水波の頭にちゃんと桜の花びらが着いた。その花びらを取ってやろうと、白井は水波の頭に手を伸ばす。 だけど、 パンッ、と水波に手を弾かれてしまう。 水波はスッと立ち上がり、白井に背を向ける。 「…すまない。七瀬に用があったのだ。悪いが、今日はもう帰ってくれ」 「おいっ、水波っ」 スタスタと七瀬が戻っていった道を水波は足早に歩いていく。 蒼井が白井の背中をトン、と押せば、白井は立ち上がり、そんな水波を追いかけてしまう。 「待てよ、水波っ、待てって」 白井の言葉に耳を傾けることなく、曲がり角を曲がった時、白井は腹が立っていたせいもあり、水波の腕を掴み、壁にへと押してしまう。 壁に強く背中を打ったのか、水波は苦痛の表情を浮かべた。 「…無礼だぞ。 離せ」 「あ?今更なに言ってんだよ。 水波、なに怒ってんだ」 「怒ってなどいない」 じゃあ、なんで目を逸らすんだ。 水波は白井から目を逸らし、呟くように言葉を発する。 そんな水波に更に腹を立てる。 「怒ってねぇなら、目ぇ逸らすなよ馬鹿水波」 「誰が馬鹿だっ!んぐっ、ん……!?」 無防備に怒鳴り、無防備に目を合わせた水波に、白井は己のコントロールなど効かず、水波に接吻してしまう。 「ん、んッ!」 水波は白井から逃れようと、白井に掴まれていない腕で、一生懸命に白井を押すが、白井はびくともせず、水波の柔らかな唇から己の唇を離した。 パンッ!!! 女かよ。 とツッコミたいくらいに、水波は顔を真っ赤にし、白井に平手打ちをして走って消えていった。 白井は赤くなった頬に手をやり、ボソリと呟く。 「いてぇ」
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