第1章

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なにも言えず黙ってしまっていたら左手を掴まれた。 すると急にさっきまでいた場所とは違う景色に変わった… 秋ごろの赤みを帯びた草原に二人で立っていた。 目の前には大きな湖があって月にも負けない光で辺りを照らしている。 新鮮なような、懐かしいようなむず痒い気持ちで眺めていたら 「ここは…良い場所でしょう?だからまた来たら良いよ。」 心が読まれてるのかとも思えるくらいに的確に言ってくるのはこの子の本質なんだな、と理解してしまった。 『また来たいと思うな。』 そう返事をすればにっこりと笑いながら手を握る力を強められた。 そう言えばここに来た時からずっと繋いでたんだ…唖然としていて気がつかなかったな、と場違いに思った。 「また、待ってるね?」 その言葉が聞こえた瞬間 目の前が暗転して気づけば抱き枕があった。 また、部屋のドアが前動作もなく開く。 「起きて!!出てけよ!!」 そう言われる度にすり減っていたものがこれ以上すり減るところが無くなってしまった… 急にまた、あの草原に行きたくなりがむしゃらに家を出てきた。 悲しい気持ちをまぎらわすためひたすらに道を歩いていれば、いつの間にか草原にいた。 「来るのが早いね」 時間は昼前ごろのはずなのに草原では月が太陽の変わりにひっそりと辺りを照らしている… 『ここにいたい…居場所が無い』 「そう思うのなら気の済むまでいたら良いよ、でもここは夢の場所だからね」 『迷惑ってわかってるけど居させて欲しい』 「居て良いよ。また来たいのならね…」 また目の前が暗転した。 次は白い天井を見ていた… あれは、全部夢なのか…落ち着く居場所が夢の場所だけなのか、何だかそれがわかった瞬間ずっと寝ていたいと思った。 今日くらいは寝ていよう… あの子と色々喋ろう、笑おう… 寝るのが楽しみになり、起きるのが憂鬱になった… そもそもはあの子に出会って楽しみが増えたから、あの日に家を出てきたから、居場所が出来た。 また今日も頑張れると思う1日になりそうだ。 あの子との出会いとあの場所が… これが全ての始まりだった。
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