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「終わりを終わりにすると、そこで本当の、終わりになってしまうわ。そこから、次の全てをはじめないとね」
私は、顔を上げて先生をみた。
「ウズラのキメラを死で終わりにするのではなく、そこから次の全てをはじめなきゃ、悔しいじゃない」
私は、先生が、キメラがただ訳もなく死ぬのが悔しいのか、故意の有無にかかわらずウズラが混入したことが悔しいのか、それ以外の何かが悔しいのか、よくわからなかったけれど、とにかく悔しい気持ちはわかるので、深く頷いた。
「だから、夜中に細胞採取したんですね」
「そうね、彼らの死を無駄にできないわ。はじまりにしないとね」
宮原先生はいつもと変わらない穏やかな口調だったけど、顔を見上げると、唇を少し噛んでいた。
先生のそんな顔、初めて見た。
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