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「あっちゃんに言わないで来たし、これ以上一緒にいたら…」
高村くんに引き摺られそうになるのを、必死で理性で押さえていた。
そんな私をジッと見つめる高村くんの視線に、胸が苦しくなる。
それを避けるように俯いた。
「そうだな、あつしが怒るよな。
引き留めてごめん。」
掴まれた手首が解放されて、悲しくなった。
もっと一緒にいたい
…もっと近づきたい
高村くんの温もりに包まれたい。
だけど…
彼の世界はこれから無限に広がっていく。その邪魔はしたくない。
「高村くんの活躍を楽しみにしてるね。
私は一番のファンだから…。」
これでいい
精一杯の笑顔を彼に向けると、背を向けてドアに向かって歩いた。
視界が揺らぎ始めるのを必死でこらえて玄関から出ると、涙が堰を切って溢れた。
拭っても拭っても止まらなくて、ドアの前で暫く動くことができなかった。
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