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自分の中にこんな衝動があるとは思っていなかった。
昏い情動。
誰にもとられたくないと思った。
何処にも行かせたくないと思った。
だから卑怯な手を使ってでも、捕まえて閉じ込めてしまえと思ったのだ。
「東風……っ!」
身体の最奥に熱を放ち、腕の中にかき抱く。
愛しい人。
彼の意識がはっきりしていたら、こんなことを私に許しはしないだろう。
常に細心の注意を払って、他人の体温を避けている人だ。
幼い頃、初めて顔を合わせた時に差し出した私の手のにすら、ためらってから触れていたのを覚えている。
やっと手に入れた。
もう、離さない。
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