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「東風……来ていたのですね。やっとですよ? もっと顔を見せて欲しいとお願いしているのに」
いつの間にか…そう、警備はどうしたのだろうと思うのだけれど、いつの間にか当然のように庭にいて、景色を眺めるあの人を見つけた父が眉を下げる。
「精一杯見せているつもりだけれどね」
「僕の行く先で、気まぐれに顔を見に来るばかりじゃないですか。僕の家族にも紹介したいから、家に来てほしいといったのに」
「だから来たよ」
「何年越しだい?」
「うっかりマメに通うと、リンに縁談をまとめられそうで」
勝手は勘弁してねと、その人はほわほわと笑った。
リン、と父を呼ぶことができる人物はほとんどいない。
それだけでも父のこの人への信頼がうかがえる。
それでも父に友達と呼べる人がいるのが不思議で、それがこんな人だというのがなお不思議に思えて、私は内心首を傾げながら、じっと見つめた。
ふと、視線を向けた彼と目が合う。
淡い淡い、目の色。
私をしげしげと眺めた後、彼は父に問うた。
「息子さん?」
「ええ、僕の自慢の息子です。西虎。西虎、こっちは東風。父さまの大事な友人だ」
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