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「はじめまして。リンから話は聞いているよ」 「お初にお目にかかります。西虎といいます」 父に紹介されて、私は作法に則って右手を差し出した。 例え不審な人であっても、父の友達だというのだから、失礼があってはいけないだろうという判断だ。 けれど東風と呼ばれた人は、一瞬、戸惑うように私の手を見つめた。 それから何かを思い切るように、けれど大急ぎで自分の手を出して私の手を握り、乱暴になる寸前の雑さで離したのだ。 「東風……」 「ごめんね、リン、これで最大限。悪気はないんだよ。気にしないでくれると嬉しいな、西虎」 困ったように笑うその顔はとても優しいものだった。 あとから経歴を聞いた時には絶対にもたらされた情報が間違っていると思ったくらいだ。 我が家に古くから仕える者どもが調べた事柄に、嘘やごまかしがあるわけがないのに、そう思ってしまった。 父のそれも、東風のそれも、それくらいに厳しいものであったし、今の二人からは想像もつかなかったのだ。
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