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序
昔話をしたいと思う。
まだたいがいの学生のワンルームにも固定電話が存在していた頃、といえばどれだけ昔の話か想像がつくだろうか。
その年の秋、僕が生まれて初めてみた日本海は想像よりもやや穏やかで、澄み渡る青だった。
その海辺でほんの3週間、何かががあったかのようで、何もなかった。虚空を掴むかのように現実から少し遊離した日常を、僕は過した。
不意にそのときのことを、正確にはそのときのことが後の僕に与えた影響について整理したい気持ちになった。
それはきっと今の僕ならその時起こったことの意味がきちんと理解できるかもしれないという期待でもあるんだ。
すこしだけ、そんな他愛のない昔話に付き合っていただけたら、嬉しい。
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