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遼ちゃん、大好きだよ。
でもごめん、今日は少し思い出に浸らせて。
情熱の大きさに目盛りがあるとしたら、それは山野くんに軍配が上がる。
けれど、山野くんに対しての気持ちが燃えるような赤ならば、遼ちゃんに対する気持ちは穏やかな赤。
激しくはなくとも、暖かみを感じる優しい赤。
私は遼ちゃんに出会って初めて、こんなに穏やかな愛情を知った。
きっと情熱にも種類がある。
今の気持ちがあの頃より劣っているとは思わない。
ゆっくりゆっくり注がれた愛情にゆっくりゆっくり応えて、今の私たちがある。
だけど、手帳を見て心がきゅって縮まったのも本当なの。
ごめんね、彼を嫌いになれないの。
今は偶然出会っても、心がまた彼に戻ることはないけれど。
あんなに激しい恋をしたのは、後にも先にも彼だけなんだ。
「どした?」
箸を止めて、俯く私を覗き込むように首を傾けた遼ちゃんが愛おしい。
遼ちゃんから与えられる赤と、一行日記に息づく山野くんの青が私をがんじがらめにする。
「なんでもないよ。いただきます」
無理に微笑んで唐揚げをかじる。
全てを知った上で、私を救いあげてくれた遼ちゃん。
あなたが私に施してくれた以上に、私はあなたを幸せに出来るかな。
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