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◇
求められると拒めない。
謝るつもりでいたのに。
自宅で何度もキスをされる。
なんで俺なんかに?
皆川がどういうつもりなのかわからない。
どうしていいかわからない。
仕返しなのか?
でも、俺には皆川のキスは甘すぎて、全く罰にはならない。
いや、罰はすぐに与えられた。
遅い時間まで帰って来ないはずの妹が予定外に早く帰ってきた。
すぐに皆川を帰そうとする。
でも、姑息な俺の悪あがきは失敗に終わる。
目の前で皆川と妹が話している。
見たくない。
母親も戻ってきた。
母親と、妹と、皆川。
この家に俺はいない。
この世界に俺を必要する人はいない。
◇
次の日、皆川の家へ連れて行かれた。
ここで愛され育ったから、皆川はあんなにも明るく輝いているのか。
どんなものでも受け入れる懐の広さがある。
この家は俺に優しい。
その事が俺を苛(さいな)む。
俺に優しくされる価値はない。
手の届かない優しい世界を見せつけられた気分さえする。
渇望が生まれる。
あきらめを覚える。
俺の家と皆川の家の対比は俺を打ちのめした。
すぎた優しさを与えられては、欲張りになってしまう。
これ以上皆川のそばにはいられない。
公園で謝罪した。
これでもう終わり。
許してもらう必要はない。
皆川が俺へ怒りを向ける。
ほっとした。
憎んで蔑んで忘れてほしい。
しかし、そうはならなかった。
謝罪を態度で示せ。そういう事だ。
言う事をきくようにと条件を出された。
まだ、皆川の側のそばにいられる。
そう思ってしまった俺は、浅ましい。
ついさっき、そばにはいられないと痛感したのに。
まだ、皆川の懐の広さにすがるつもりか?
どんな酷い命令をされたとしても、見捨てられるより辛い罰にはならない。
浅ましい。
浅ましい。
俺は皆川の目に逆らえない。
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