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◇
世界がひっくり返った。
皆川が恋人になれと言う。
意味が分からない。
意味が分からないけど、なにか事情があるんだろう。
頷くしかない。
皆川の命令は絶対。
好きかと聞かれる。
好きだ。
皆川はきれいでまぶしい。
好きにならずにいられない。
けれど、求められている『好き』は違う。
持っていかないでくれ。
俺の出来ることすべてをお前に捧げる。
だが…その気持ちまでもっていかれたら、俺はお前にすがって、一人で立っていられなくなってしまう。
「…好きだ。」
強制的に言わされる言葉。
与えられるキス。
「好きだ。」
また、キス。
触れる肌から温もりが伝わる。
繰り返されるキス。
暖かくきれいな皆川に…溺れてしまう。
皆川の鼓動が伝わる。
求められてる。
それがわかる。
俺の気持ちなんか受け取って、それで嬉しいのか?
好きになっていいのか?
不安になる…でも、それはきっともう『好き』だからだ。
俺の心の底に隠れていた『好き』を皆川は容赦なく引っ張り出した。
けど、そんなもの皆川のためにはならない。
俺の『好き』なんか受け取るべきじゃない。
言葉は尽くした。
皆川は皆川が本当に好きな人と付き合うべきだ。
しかし。
理解不能だ。
皆川の言葉が全く理解できない。
皆川が俺の事を好きだという。
『両思いだから恋人同士』
誰と誰がだ?
反論は受け付けない?
反論できるほど頭がまわっていない。
ほぼ思考停止状態だ。
皆川は俺のせいでどこか壊れてしまったのかもしれない。
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