あふれたコップと表面張力

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「だいぶ肉付きよくなってきたな。」 皆川の細めだがしっかりと筋肉のついた健康的な身体と比べると、まだ貧弱なことこの上ない。 「太らせて美味しく喰ってやるから、しっかりかぁちゃんのメシ喰えよ。」 「すでに何度か喰われている気がするが。」 「え?」 「口とアソコでさんざん俺を喰いつくしただろ?」 「だぁっ!もう、控えめなくせに言葉が生なましいんだよ」 イヤらしい事をしたがるくせに、だだの単語に恥ずかしがる方がよくわからない。 キスを与えられる。 ただの言葉なんかよりも、ずっとずっと生々しいキス。 欲情している。 俺なんかに。 何故だろう。 「オレがどんだけ坂崎が好きかちょっとづつわからせてやるから」 そう言われても、きっと、ずっと不思議に思い続けるだろう。 でも、俺はもう逃げようとはしない。 求められる限り、俺の愛を皆川に与え続けていく。 それが、俺が皆川に示された償いかただからだ。 「さかざきぃ」 「………。ダメだ。」 「おねがい。ちょっとだけ舐めさせて?命令だし。ちょっとだけだし。」 「ダメだ。」 「やっぱ、おまえ全然言う事きいてくれない。オレの事キライ?」 「そんなわけない。」 「すき?」 「皆川は俺の水だよ。」 「水?」 「ああ。ないと生きていけない。」 そう言って、初めて自分から皆川に深いキスを与えた。 〈終〉
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