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「俺がなにしたっていいだろぉ?だって、"妻の店"だもんなぁ」
「あんたなんかの妻じゃない。あんたなんかの、山賊なんかの」
コップや皿の割れる音が響く。怯えた顔をした先を見れば、男は近くの机の上を凪ぎ払っていた。
酒場の女の血色はほとんどなく、体の震えを押さえつけるので精一杯。
男は酒場の女を壁際へ追い込むように近寄る。
「うっさい。てめぇが逃げなけりゃ、俺は下っぱにゃ、ならなんだ。てめぇのカラダひとつありゃ、な。てめぇのせいだ。だから連れていく。あ゛?抵抗しても無駄だよ」
酒場の女を押さえつけ、まくし立てていた男はぎょろりと客へ目を移す。
「邪魔したらな、全員ぶっ殺す。あと、あり金すべてだしたら生かしてやる」
狂った瞳に抵抗する者はなく、一人が財布を投げると次々財布が集まっていった。
男は口を緩ませ、女をつかんでいた手を離し、財布に手を伸ばした。緩みきった男の口に、気配を消したソラの手が伸びて布をあてる。
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