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 酒場は陽気な歌声に満ちていて、人々は肩を組んだり、笑いあっていたり。二人は興味深げに辺りを見回す。 「誰に聞く?」 「にゃにを聞くのにゃら」 「うひゃあ!」  ソラだけに囁いたつもりのジェミニはいきなり酒臭い息を吹き掛けられ、床へひっくり返った。腰をさすりながら起き上がると、酔いが回りきった中年の男がソラに絡んでいた。  飛び上がるように立ち上がり、ソラの側へ戻った。 「お、姉ちゃんも聞いてくれにゃいかい?俺の若いこらぁな、ナイフ一本で一角獅子を倒したこともあるんにゃあ」  二人が曖昧に笑いながら相づちをうつと、男は目尻を下げて頷き、酒臭い息を吐きながら自慢話を繰り返し話した。  真剣に聞くソラの顔を盗み見て、ジェミニは頭を抱えた。熱く、気持ちも燃え上がるような話だが、似たり寄ったりのモンスター退治の話はジェミニにとって退屈で仕方ない。  ジェミニは密かにあくびを噛み殺しながら、酒臭い中年の話を聞いていた。
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