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「これ。ディランさん、これ以上だめだよ」
ディランと呼ばれた男は酒を持って現れた女に軽くいさめられ、へらりと笑う。ジェミニは胸に針が刺さった痛みを覚えつつ、女へ礼を言った。
「あ、あの、ありがとうございます。ソラ、絡まれやすくて」
「いいんだよ。あ、どこから来たんだい?あと旅をした場所の話も聞きたいねぇ」
矢継ぎ早に繰り出される質問へジェミニは答えようとした。ソラはそれを遮る。
「それよりも。単刀直入に問うが、"幻の花"を知らないか?」
その場だけ風だけの音が支配する。やがて周りの音を耳が拾いだしたとき、どこともなくため息の吐く音がする。
「にいちゃん、ねえちゃんよ。旅びたぁ、皆なぁ、ここで聞いちゃあ、行くんだ。で、帰ってくるときにゃ、息をしとらん人形さんだ。止めときな」
酔いが覚めたらしいディランは真剣な眼差しで二人を見据えて諭そうとする。
「ワシの息子もな・・・・・・。飲むしかやっとれんわい」
悲しげにうつむいたディランにかける言葉もなく、二人はうなだれた。
追い討ちをかけるように不安な言葉を次々周りから声をかけられる。
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