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俺には夢があった。
憧れがあった。
俺がなりたかった生徒会は、こんなんじゃなかった筈だ。
俺は11年前、この学園の下見も兼ねて親と学園祭を見に来た。
只でさえ人の多い学園の学園祭は、一般公開により更に人出は増した。
まだ小学生になるまえの幼児がこの広い学園で迷子になるなんて絶望的だ。
俺は 泣いた。
その絶望的迷子になったからだ。
もちろん 泣いた。
親と離れてしまった不安。
どこを見ても 人 人 人。
『…お、おとうさんっ!おかあさん!』
やっと絞り出した声は人波に吸い込まれ、俺はまるで この世で一人ぼっちになったようで怖かった。
『お!迷子ハッケーン!』
『!!!』
怖くてしゃがみこんでいた俺は、突然の浮遊感に驚いた。
『!?、?』
『ははっ、泣くな泣くな。今お母さんとお父さんを探してやるからな?』
いきなり高くなった目線にビックリして見回すと、赤い頭が目に止まった。
『お母さんとお父さんは今日何色の服を着てた?』
真っ赤なヘルメット。
ゴツいゴーグルに、大きなマント。赤い服。
露出した口だけが、豪快に笑った。
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