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冷たいコンクリートの壁に背をもたれながら、堀内彼方(ほりうち かなた)はパイロットスーツの懐からタバコとライターを取り出した。 今年で二十一歳。戦争開始と共に徴兵され、今は最前線に向かう為、戦艦に乗り込んでいる。 国籍は日本だが母方に西洋の血が混じっている為、顔立ちは白人に近い。髪も瞳も色素が薄く、日に透けてしまいそうな琥珀色に近かった。 世界が混乱する中、生粋の日本人というのは年々減少している。髪や目の色、肌の色も多種多様な人種が混ざり合っている。 だが正面にある二段ベッドで寝転ぶ山重志由(やましげ しゆう)は、昔ながらの東洋系の面立ちをしていた。 一八〇センチを超える高身長に、ほどよくついた筋肉。漆黒の髪、鳶色の瞳。 凛とした侍のような空気は、遠い日本の記憶を思い出させた。
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