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見つめられると飲み込まれそうになる黒い切れ長の瞳を細め、気だるげに前髪をかき上げた。
「起きてるぜ。つーか、お前、もういい加減に禁煙しろよ」
志由は見かけに反して酒もタバコもやらないタチで、事あるごとに禁煙しろと煩く言ってくる。
「今更、体の心配しても仕方ねーじゃん。俺たち、どーせ死んじゃうんだし」
彼方の投げやりな言い方に、珍しく志由がふっと小さな笑みを漏らした。
「そうだな。さすがに今回は俺も生きて帰れると思ってねーわ」
いつもなら諦めるなと励ましの言葉をかけてくる戦友も、今回は焦燥の色が濃い。
一介の兵士に戦況が把握できないように情報はかなり制限されていたが、世界はもう各地にばら撒かれた核ミサイルでボロボロだ。
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