忠告 type『C』

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 念のため、看護士すべての面通しを頼まれたが、そこに、移動を告げてきた看護士はいなかった。ただ、古株の看護士が一人、俺が語った男の風貌から、その人物は数年前にあの部屋に入院していた男ではないかという話を聞かされた。  担当ではなかったから詳しくは覚えていないが、退院間近だったのに容体が急変し、そのまま亡くなってしまった人らしい。  それが事実だとしたら、あれは幽霊だったのだろうか。でも、どうして今になってその男が化けて出てきたのか、俺にあんなことを告げたのかは謎のままだ。むろん、ベッドの下で体験したおぞましい出来事も、まったくもって理解が及ばない。  ただ一つだけ、はっきりしていることがある。それは、どんなにもっともらしく聞こえても、信用していいのかどうかも判らない忠告には耳を貸さない、ということだ。  体中に残る怪異の痕跡。それが消えるまで…消えたとしても、この考えは俺の意識に刻まれたままだろう。 忠告 type『C』…完
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