首都カンザスブルグ

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まだ日が昇りきっていないほどの明朝。 チラホラと歩いている者がいるが、それらはほとんどが散歩を行っている健康志向の者だ。 商店も何も開いていない最中、カナミは鎖で巻きに巻かれた状態で外界へと連れ出されていた。 留置所の前に止められていたのは中型の馬車であった。 二頭の栗色の馬が引いている馬車は、外からは中を覗けない構造になっている。 というのも、その馬車の中が少しだけ変わった造りになっているのだ。 箱型の馬車の奥半分が鉄格子で覆われていて、金属製のトビラが備え付けられていた。 考えなくてもわかる。 カナミのスペースは半分よりも奥、鉄格子の向こう側だ。 どうやらどんなことがあっても逃がすつもりは無いらしい。 「おはよう。 昨日は良く眠れたか?」 昨日とは打って変わり、ジルバートが上機嫌で挨拶をしてくれた。 「おはようじゃないだろ! なんで馬車があるんだよ!」 「あの後もう一度直訴しに行ってな。 するとどうだ! 国王陛下が気前良く下さったのだ!」 これは囚人護送用の馬車。 こんな特殊な構造をした馬車などそこまで多くは作られていない。 それにこれは妙な話だった。 公女様の受け入れ拒否をしたのだから、彼女に対しての礼節はいらない。 おそらくは王宮へ辿り着いたことすらも隠蔽するはずだ。 「バカ言うなよ。 あの王がくれるわけないだろ」 「ふん。 俺の日頃の行いが良かったのだろうな」 鎖を引かれ、カナミが馬車の中にある牢獄に収監される。 中は意外にも簡素な造りになっていた。 外壁は新品のようにペンキが塗られていたのだが、内面はところどころ剥げている。 鉄格子外の前部分は両脇に外壁の木を外す場所がある。 どうやらそこが窓の部分になるらしい。 「中古だな。 いくらだよ、この馬車」 カナミが鉄格子の奥から呆れたような声を出した。
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