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普通の石畳をのんびりと歩行していく二頭の馬は、これといって注目もされずに宿屋を探していた。
活気のある八百屋の角を横切って、旅行記の通りに進んでいくと、そこには普通の道が広がっている。
中央に木が道に並行して植えられていて、馬車はその進行方向左側を進んでいけば良い。
ごく普通の一般道。
旅行記にも、この町は特筆するべきことは無いと書かれていた。
道沿いは行列の出来るパン屋がある。
旅行記には、美味しいけど何処かで食べたことのある味だと書かれていた。
この町の外観はまるで首都カンザスブルグそのものであり、首都をトレースして出来たかのような町並みであった。
これまたそれなりに栄えているのが厄介で、この町に住んでいる者は都市っ子を気取る節がある。
首都に一番近い町出身であるから、出身を問われた際に『首都みたいなもん』と答えるのが定型となっていた。
ただ、旅行者や観光客からすると意味合いが違う。
首都に似せた町に行くくらいなら首都に行く、と言われてしまうのだ。
首都に最も近いからこそ起こってしまった悲劇。
この普通の町チュートは、首都へ向かう、もしくは首都から出て行くための通過点でしかない町だった。
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