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カナミは思い出したかのように口を開いた。
「白い宝石って、どんなものがある?」
先が見通せないほど白く濁った宝石で、あまり高価そうには見えないもの。
それはステリの小物入れにあった。
彼女は女ということもあり、別の部屋にて休息を取っている。
直接本人に聞いても良いのだが、まだ信頼関係を作っていない三人であるから、遠回りに確かめてしまう。
「うーむ。 宝石には詳しくないからな」
「ステリが持ってたんだよねぇ。 気持ち悪い色した宝石でさ」
首からぶら下げるような装飾を施されていたが、それを身に付けず小物入れに隠すように入れていた。
受け入れ拒否をされた彼女だから、王国がわざわざ日用品ではない宝石を渡す意味は無い。
ステリが自国から脱出する時に持ってきたーーあるいは持ち出したものだとカナミは考えていた。
「お前まさか、盗んで金に変えようだなんて考えてないだろうな」
「俺、泥棒じゃないから。 武器職人だから」
そこでその会話は終わってしまった。
それ以降は特に会話など無く、二人とも自分の作業を黙々とこなしているだけ。
世代的にも水と油である彼らは決して交わろうとせず、お互いの作業を無視でもするように過ごした。
ステリは何かを隠している。
その予感を、カナミは裁縫を適当に行いながら感じていた。
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