北方のシュリ

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カナミが裁縫を始めてから三日が過ぎた。 その間は彼も脱走することなく作業に取り組み、その姿勢は三重線と決めてかかっていたカンコーも目を見張るほど。 次第に彼ら二人は打ち解けていき、ステリやジルバートよりも仲が良くなっていた。 「待ちに待ったお披露目の時だ。 カンコーさん、準備は良いかい」 「いやぁ、楽しみですね!」 応接室に椅子を三つ並べて、面接のように扉を向かいにして座っているステリ、ジルバート、カンコー。 楽しみにしているのはステリとカンコーのみで、ジルバートは不安そうに黙り込んでいる。 カナミからまともなキャラクターが生まれるとは思えないからだ。 そんな発案者であるカナミは扉の前に立って進行を務めていた。 カナミの服装は変貌している。 黒いぶかぶかのローブを身に纏い、その姿はまるで地方所属のマフィアのようだった。 内側に多種多様な細工を施した改造ローブが完成していた。 まだ武器も何も仕込んでいないが、あると無いとでは心構えが変わってくる。 「一体目。 お忍び公女グルメさん」 カナミが作ったキャラクターは二体。 本当は一体で済ませようとしたのだ。 だがステリがどうしてもグルメさんを作って欲しいと懇願してきたので、彼は渋々といった感じで作っていた。 扉の先から現れたのはグルメさんと呼ばれた着ぐるみだ。 桃色のドレスを着て、あらゆる箇所にヒラヒラの装飾を付けた雑な着ぐるみが応接室へと入ってくる。 「誰が入っているんだ?」 気になったジルバートが問いかける。 カナミは手元の資料を見ながら、それに答えた。 「町の若いヤツに頼んだ。 ボランティアみたいなもんだな」 「ふーむ。 見上げた若者もいるものだな」 このアイディア自体はカナミのものではないため、あまり説明することはできない。 満足そうな笑顔でいるステリのみが知るキャラクターだ。 グルメさんという女性を模した着ぐるみは、ステリの熱烈な視線に答えるようにジッと彼女の方を見つめていた。
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