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その日の夜はボロボロの民宿に泊まった。
数年ぶりに父さんと一緒にお風呂に入り、夜は布団に潜りながら父さんの子供の頃の話を聞かされた。
父さんは警察ですら手もつけられない悪ガキだったらしい、だから僕を見てると昔の自分を見ているようで怒るに怒れないと言った。でもそれで良いんだと言った。
「この道はいつか来た道、あの道はいつか行く道」目を閉じながら聞いたその言葉が脳裏に焼きついて離れなかった。
日が明けて、父さんと一緒にまた山に登った、今度は金時山とは違う山で頂上には厳つい岩がゴロゴロと転がっている。
昔から父さんの左腕には銀色の腕輪が嵌められていて、ずっとそれは腕時計だと思っていたけどやっぱり違うものだった。
父さんは腕輪を弄ると「天翔る星の煌めき……」と呟き、重厚な装備を纏った武士のような姿に変身した。
「星夜、予想が外れて残念、子供騙しじゃないんだよ」
僕は腰を抜かして、デコピンで岩を砕く父さんを眺めていたけれど、変身したのは父さんだったから、なんだか納得がいった。
「世代交代だ、これからはお前がヒーローだ。好きなように地球を守れ」
『父さんの石』を抜いた腕輪を僕に渡すと「お前の石を嵌めるんだ」と言ったから、僕は昨日の石をそこに嵌めた。
帰りの車内、ヒーローの掟だと言って、またいろんな事を教えてくれた。
お前が本当の優しさに気づいた時、ようやく変身できるだろう。
この車はロボットの左肩にあたる部分だ。
この力を軍事的な理由で使用してはいけない。
坂田金時以来、石の力を必要とする事態は起こっていない。でもいざという時のため俺達は存在している。俺達は悪者が現れた時に初めて人を助ける、もしそれが悪人やテロリストであろうと助けなきゃいけない。
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