《大人の階段》

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父さんのいない日は、小学校から帰ると自分の部屋でスマホのゲームをしていた。 僕の親は頭が固いから、課金なんてできなかった。 もちろん、このゲームを始めたての頃はお金をかけて自分のパーティーを強くしたいと思っていたけれども、父さんにバレたらどんなに怒られるかわからないから無課金でゲームに興じた。 そうしているうちに、それが自然なことになって行くから不思議だった。 友達の春輝(ハルキ)は、親がおこずかいを課金に充てることを許しているから、僕と同じプレイ時間でも、僕の倍以上、先のステージに進んでいて羨ましい。 春輝のキャラに助けてもらう時は、どうしても倒せない強い敵に出会った時と決めていた。 だって、1日に1回しか友達のキャラを使えないから。春輝のキャラはそれほどに強かった。 「星夜(セイヤ)!ご飯食べなさい!」 リビングで、母さんが叫んでいる。 友達の家と比べても、僕の家は割と広い。 そんな広い一軒家に、僕と母さんしかいないんだ。 僕が母さんの言葉をシカトすれば、母さんは、なんだか1人で叫んでいるようで、馬鹿みたいで可笑しかった。 ゲームをやっていると、お腹も空かないし、おしっことかも、なんだかいつもより長く我慢できる。それだけ僕は集中しているのか、もしくはゲームには生理的欲求を紛らわす力があるのかもしれない。水や食料の乏しい場所に住んでいる人達にゲームを与えたら、意外に効果があるんじゃないかな。 「星夜!ご は ん!」 父さんのいない日は、いつもこんな感じで、母さんが勝手に叫んでいるのを聞いていた。 母さんは、勉強しろだのゲームのしすぎだの、うるさい。 別に、中学受験を受けるわけでもないのに、勉強なんかしなくたって僕は、学年で平均以上の順位をキープできているんだから、母さんもそこで満足すればいいのに、欲張りすぎだ。自分に無いものを子供に求めないでほしい。 それにゲームだって、僕は文句のひとつも言わず無課金で頑張っている。母さんも父さんも、僕がどれだけ気を遣っているのかわかってない。子供に気を遣わせる親って、なんだかダサくて情けない。僕がその立場なら、絶対後悔するな、産んだこと。 あんな親には、なりたくないな。
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