《12歳の誕生日》

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「早く起きろ、もう6時だぞ」 珍しく僕を起こしたのは父さんの声で、僕は一気に目を覚ました。 リビングにはもう荷物が揃っている、なんだかキャンプに行くような大層なリュックサックが並べられていた。 その中の見慣れたリュックサックを背負うと僕は父さんの愛車である黒いハマーに乗り込む。 玄関では母さんが心配そうに「気をつけて行ってらっしゃいね」と父さんを見送っていた。 誕生日おめでとう、と言う決まり文句も無いままに車は発進する。 父さんは箱根に行くとだけ言い、カーステレオを操作した。 朝の雰囲気とは不釣り合いの、大人っぽいサックスの演奏、父さんの好きなジャズが車内に響く。
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