終章

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############### 少女は涙をぬぐい、本を閉じた。内容以上に、やっと読めたことで満足していた。すでに絶版になっていたこの本は、インターネットで調べても手に入れることができなかったが、友達が「国会図書館に行けば?」と教えてくれたのだ。 そんな手があったのか、と急いで向かい、無事に読破できたばかりだった。 その達成感のせいで、少女はあの奇妙な事件の当事者、いや発端者であるのにも関わらず、この時、異変には全く気付かなかったのだ。これが全ての始まりだった、なんてことを少女は知る由もなかった。少女が知るのは三日後だ。すなわちその他大勢と変わらなかった。 もしかしたら、この時起きた小さな異変に彼女が気付いたのならば、ここまで大きなことにはならなかったのかもしれない。しかし、もしも、なんていうことは起きないのだから仕方ない。起きてしまったものはどうすることもできない。 三日後、彼女を含めた国民が、それをニュースで知ることになる。 なんて表現をしたら良いのかわからないので、その奇妙な事件は、ニュースに沿って伝えることにしよう。 「ブックジャック事件」 何がなんだがわからないとは思うが、起きたことをそのまま伝える。 ある三人の登場人物が様々な物語に入ってきたのだ。 以上。 わからないって?いやわからないのが当然だ。私にも正直良く分からないのだから。 しかしだ、そんな起きるはずがないものが、実際に起きてしまったのだ。私たちはそれを受け入れるしかない。 少女は本を返そうと立ち上がった。そのため彼女は隣にいた女性の声を聞くことができなかったのだ。もし聞いていたら何かが変わったのかもしれないし、変わらなかったのかもしれない。 「あれ?誰これ?こんな人物、この本にいたっけ??」
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