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球技大会の閉会式とホームルームを終えた俺と有紗は、校舎の廊下を歩いていた。
教室の無い一階の廊下に人は少なく、手を握り合った俺達はそれほど目立たない。
既に制服に着替えはしているが、一時間ほど前にかいた汗の臭いが体から漏れてくる。
ボールを何度も受け止めた両腕は有紗の手を握ることさえ大変なほどの痛みを感じる。
普段から飛ぶなんてことをしないからだろう、脚が棒のようで無理をすると直ぐにつりそうになる。
持ってきた水筒の中身は既に空っぽ。
廊下の薄暗い手洗い場横に備えられた、長い直方体のドラム缶のようなフォータークーラーの前で先客の男子生徒が、弱い勢いで上向きに放出される水にかぶりついている。
俺達はその男子生徒の後ろに並ぶような形で男子生徒が飲み終わるのを待った。
男子生徒が俺達に気づくと、水を止めて口元を手の甲で拭った。
「須藤君だったんだ」
有紗の言う通り、その男子生徒がこちらを向くと、そいつは須藤だった。
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