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本当に単純なこと。
「『付き合ってください』。俺に対してそれを言うだけでいいんだ。それさえ言ってくれれば、どんな人とだって付き合ってあげる」
俺は有紗を起こしながら立ち上がった。
表情を変えずに智優は俺の話を聞いている。
初めから分かった上で聞いてきたって顔だな。
まあ、さっきの返事で分かっただろう。
分かった上で聞いてきたなら尚更理解しただろう。
俺の恋愛に関する価値観なんてそんなもんだ。
俺達はブルーウィークの間、物置部屋と化した多目的ホールに向かった。
劇で使う竹刀を取りに来たのだ。
竹刀は剣道部で使わなくなった物を使うため、剣道部が管理をしている。
バスケットコート一つ分の、狭い体育館のような場所の半分は使われていない机や体育祭の道具で溢れている。
青い巨大バケツのような入れ物に竹刀が二十本前後入ったそれを前にして、智優が前に出た。
「わたしが持ちますね。二人は片手塞がってるだろうし」
「いやそれなら三人で持とう」
さすがに女子一人にもたせるのは申し訳ない。
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