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「心配しなくても俺がもってやる」
最近よく耳にするようになった声が俺達の背中から聞こえた。
「転校生……」
転校生は竹刀の入った入れ物を持ち上げ、少し移動して、竹刀を二本抜いた。
一本を俺の方に投げ、入れ物を床に置いた。
「構えろ南森」
両脇を閉め、竹刀の先と体を俺の方に向けて転校生は言った。
「防具を外して竹刀を構えたことはあるか?」
「有紗、離れてろ」
俺は有紗の手を離した。
すると有紗は床に腰を落とし、脱力し切りそうな体を両腕で支えた。
「二人とも! 何するつもりなの!?」
少し息を荒くした有紗の声。
「県大会は飽きらめてやる。ここで俺が勝とうが負けようがな。ただ、俺がお前に勝った後、お前が大会で優勝したとしよう。面白くはないか?」
「面白くはないですよ。蒼君」
「智優。転校生に反発しなくてもいいよ。俺が負けなければいいだけなんだろ」
バレーでは借りがある。
でも、それとは別でそろそろ心を折っておくべき時期だな。
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