第1章

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爽やかな風が、草原を吹き抜けていく。 草の感触を背中に感じながら澄んだ空を眺める一人の少年の姿があった。 少年は、この世でも珍しい赤い髪に緋色の瞳を持って生まれてきた。 特別なのは、髪の色に留まらず…少年は、人々から赤の王に愛されし者と呼ばれ尊ばれる存在であった。 不思議な事に、赤い髪の子供が生まれた年は、大地は豊穣に恵まれ、稀少な鉱石が発掘される等、豊かな生活が約束されるのだった。 そして、もう一つ…少年の暮らすこの国には、赤い髪の者以外にも特別な者が存在した。 それは、赤い髪の少年に対を成す様に存在する。 青い髪に蒼い瞳を宿した子供だった。 青い髪の子供が、生まれた年は、水の恩恵に恵まれ…殆ど水の降らない干ばつ地帯に恵みの雨が降り 海では、長く漁師をしてきた者が、経験した事が無いような大漁が、約束されるのだった。 それは、この世界を作り出した創世記の赤の王と青の王と呼ばれる二神から愛されし子供達への神からの祝福だと考えられていた。 赤い髪の子供や青い髪の子供は、王家の血筋にしか現れず…また、同じ時代に二人生まれてくる事も決して無かった。 赤髪の少年は、そう遠くない未来に王となる。 その燃えるような瞳に空を映し呟いた『僕らは、何故生まれてくるのだろう?』 赤い毛の少年は、答えを求め記憶の中に意識を沈めていく。 王家に伝わる語り部達の夢物語を思い出しながら…
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