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すっかり暗くなった道を、メイはスキップしながら進む。室内とは違い、外の空気はひんやりと冷たく、頬にあたる風は澄みきった冬の空気になっていた。行き交う人もみな厚手の上着をまとい、マフラーに顔をうずめる人もいる。
けれどメイにはそんなこと関係なかった。確かに冬は寒いけれど、大好きだった。駅前通りを照らすイルミネーションがきらきらと輝く。気の早いお店からはクリスマスソングも聞こえてくる。
まだ1ヶ月以上先だが、クリスマスを思うと自然と笑みがこぼれる。ナオヤはきっと嫌がるだろうが、いっぱい飾り付けをしよう。ツリーも準備しなければ。当日はおいしい料理をたくさん作って、真ん中には6号のデコレーションケーキ。この間見かけたサンタ風の赤いワンピースも買ってしまおうか。
本音を言えば、クリスマスはナオヤと二人で過ごしたい。でも、同居人のタツヒコも当然一緒だ。幹部候補生でエリートなのだから恋人でも見つけてくれればいいのにと思っていたが、どうやら今年も無理だったようだ。でもまぁ、そこは仕方がない。ナオヤと一緒なら三人でも良しとしよう。
浮き足立つ思いを止められない。
遠くに見えた来たケーキ屋。レンガ造りの壁が特徴の、この辺りで一番の老舗。何度かケーキを買ったことがあるが、いつもカットされたケーキばかり。ホールケーキを買うのははじめてだった。
6号のケーキを予約して、まだ残っていたらシュークリームを三つ買おう。いや、それとも甘いものが好きではないナオヤとタツヒコにはコーヒーゼリーにしようか。
メイがあれやこれやと考えていた時、その声は聞こえた。
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