18センチに祈りをこめて

8/9
前へ
/9ページ
次へ
 らしくないメイの態度。 「今日はいやにあっさりしてたな…………」  メイが出ていったあとの玄関を見つめながら、ナオヤはぽつりと呟く。違和感が胸の中に広がる。  同じく違和感を感じたタツヒコは、読んでいた文庫本をテーブルの端に置き、ナオヤのノートパソコンを自分の方へと引き寄せる。そして、確認するための画面へ切り替える。 メイに下された仕事を確認するために。  そして、メイの仕事を確認したとたん、それまで無表情だったタツヒコの顔が険しくなる。 「…………28エリアだ」 「え?」 「メイが行く、今回の戦場」  タツヒコの声に、ナオヤの頭の中は真っ白になった。 「嘘、だろ…………」 「いや、嘘じゃない」 「だって、28エリアは…………」 「あぁ、激戦地だ。今は時間稼ぎするためにただ戦力をつぎ込んでるだけだって話だ」  幹部候補生のタツヒコじゃなくても、28エリアの惨状は知っていた。そして、そこへ送られたものが二度と戻ってこれないことも。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加