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私立高校香南学園、そこは都内でも有名な高校。
授業のレベルが高く、優秀な生徒が多い。部活ももちろんのこと、ボランティアなどの慈善活動にも精を出している。
今日は学園の入学式。暖かい陽気の中、左右に連なる桜の木がひらひらと桜の小さな花弁を舞い散らし、その中を真新しい制服に身を包んだ新入生達が期待に胸を踊らせ歩いていく。
そんな新入生達の中を二人、ゆったりと並んで歩く少年達がいた。
一人は長い紅色の髪を流した背の高い少年。顔は誰もが一度は振り向くほど整った顔立ちをしており、勝気な印象を受ける目元を眠そうに緩めている。その瞳は綺麗な銀色。傍らにいる少年を見上げている。
傍らの少年は紅色の少年よりも高く、艶のある短い黒髪を無造作に整えている。こちらも整った顔立ちをしており、キリッとつり上がった眉は彫りの深い顔をより強く見せている。その瞳は目にかかった黒髪から満月のように除く黄金をしていた。
二人とも香南学園の制服である黒色のブレザーに身を包んでおり、他の生徒同様青いバッジを付けている。
「今日は入学式だけだったか?」
「いえ、その後教室にて担任の話を聞き名札等の配布物を確認。クラスによっては遅くなる場合もありますが大体十二時頃には帰れるかと。」
「うぁ、面倒い・・・」
紅色の少年ーー亨が傍らの少年ーー歩に問うた事に歩は今日の予定を脳内に浮かべ正確に答える。その答えに亨は無表情のままではあるが億劫そうな声を出した。
亨は人が騒いだりしている場所が嫌いである。元から容姿などいろいろな諸事情により目立ちやすく、やっかみなどを受けることが必然と多くなるのだ。幼い頃は多少心を痛めたが、今はただただ煩わしいだけだ。それは歩も同様である。その為、亨と同じく歩も眉間にしわを寄せ顔を顰めた。
そんなこんなで歩いていく二人は、先程より一層体を近づけている。歩が半歩前に出て、その後を亨が歩のブレザーの裾を掴んで歩いている。その光景はさながら従者が主君を守っているようにも、恋人が不安を顕にしているようにも見える。
他人にはその光景は不自然に映るかもしれない。
だが、この二人はこれが普通なのだ。
お互いがお互いを必要とし、何人たりとも入れようとしない。
それが二人には必要なのだ。
お互いに依存している。
それが、二人のただ一つ
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