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ぶつぶつ呟きながら、何故か自分の胸に手を当てている。もう小さくなっているため声は聞こえないが……胸に手を当てているアカリからは「うぅ……」と悲壮めいたうめきが聞こえてくる。まるで、その大きさに絶望しているかのように。
「ぅ…ぬぁあああ!いいもんまだ成長期だもん!これから大きくなるもん!ヒロトのバカ!オルテリアの泥棒猫!」
いきなりそんなことを叫んだかと思えば、ガツガツと弁当を食い始めた。一体アカリの中では何が起こっているのだろう?そして何故にオルテリア?急に呼び捨て?
「機嫌が悪いな、ヴィールズ」
「あ、先生」
ガツガツ弁当を食べていくアカリと、ゆっくり味わって食べていく俺。そんなところへ声がかかる。そこへ現れたのは、神力テストの時に担当していた教師、ティファルダ・アラナシカ先生だ。
「何ですか一体……」
「おいおい私にまで噛みつくなよ?それに用があるのはキミではない。……そこの落第生くんだ。なあ、カルバジナ?」
機嫌が悪いアカリは、先生にも「ふしゃー!」と威嚇している。だが先生はそれを軽く笑い飛ばし、俺を見る。その視線に、俺は嫌な予感を感じる。実のところこうして先生が俺に用だと言って会いに来るのは今日が初めてではない。
「あの……俺に何か?」
「何か?だと?キミ自身わかってるだろう?それでとぼけるなんて、芸達者な奴じゃないか!」
はい、その通りです。言ってみただけです。……何かおかしかったのか高笑いする先生と、きょとんと首をかしげているアカリ。
「あの、今ご飯食べてるので後でもいいですか」
「むしろ休憩中だから呼びに来たんだがな。まあ、せっかくのヴィールズの愛妻弁当を味わって食べたいという気持ちはわかるがな」
「あっ、あああ……!?」
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