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どうやら逃げられないらしい。仕方ないか。隣で真っ赤になって「あ、あああ……」と言っているアカリを横目に、観念した俺は、急いで弁当を体内にかきこんでいく。
先生の用事というのは……まあ要するに、先生の仕事の手伝いというやつだ。もちろん仕事というのはあらゆる項目が含まれるわけで……詰まるところ雑用だ。これには、海よりも深く空よりも高い理由が……
「ふぃー、ごっそさん!美味かったぞアカリ!」
急ピッチで食べ終え、お茶で流し込む。正直かきこみすぎて後半味がわかんなかったが、美味かった!うん!
「というわけで、カルバジナを少し借りるぞ?」
「ああ、あ……って、え、ちょっと!」
空っぽになった弁当箱を片付け、お礼を告げる。忙しない様子に困惑するアカリだが、それをよそに先生は俺を引っ張っていく。悪いなアカリ、これを断ることはできないんだ。
遠ざかっていくアカリは、呆然と立ち尽くしていた。そんなアカリを背に、俺は歩き出していた。だから、遠ざかる背中に、彼女の呟きは届くことはなかった。
「……バカ」
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