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「さあ、わかったろ?青髪女を助けるにはお前の天力しかない。が、そのためにはアタシを倒さないといけない。それも、制限時間付きでな」
ま、助けたくないなら別だけど……と、煽ってくることも忘れない。
本当なら、生きてエドさんらと会うはずだった村の人々を殺し。ユメちゃんを手に掛けようとし。オルちゃんを今まさに毒により苦しめる。それも、理由はいずれも私に動揺を与えるためだけのものだ。
制限時間付き。それも十分で、この得体の知れない子を倒さないといけない。それは、とてつもなく難しいこと。だったら……
「見捨てる……?」
出た可能性を、即座に否定。そんな選択肢、私には、ない!それに、考えている時間すらもも!
「あなたが何で私を……ううん、人間を憎んでるのか知らないけど、私はあなたを、倒す!」
手の内を計っている時間はない!最初から全力でいく!
「"光の矢"!」
両手に天力を集中させ、光の弓矢を作る。それを構え、照準を合わせ相手に放つ。
「はっ、こんな直線的な攻撃……」
そう、この間のような、雑魚悪魔相手の不意打ちならともかく……レベルの違うこの子相手に真正面から打っても効果は薄いだろう。だけど……
「『分散』!」
一本だった矢が、突如六本に別れる。ただ真っ直ぐでなく、変則的な動きだ。一本だけなら容易く避けることも弾くことも出来るけど、これならどう!?
「……」
だけど女の子は、何の素振りも見せずただ突っ立っている。焦る様子も、避ける様子も、迎撃する様子さえも。しかも、気付けば前進しているではないか。あのままじゃ、六本の矢が全身を串刺ししてしまう!正気!?
「なっ…」
次の瞬間、私は目を疑った。一番スピードに乗っていた矢。今まさに、顔に当たる……その矢を、素手で掴んで止めたのだ。
掴んだ手からは出血しており、悪魔相手に天の力を持つ矢は触れるだけでも相当なダメージがあるはずなのは証明されている。それなのに、苦痛の表情どころか……
続いて襲い掛かる五本の矢。それを彼女が確認すると、掴んでいた矢を折り、投げ捨てる。そして……矢を、殴り飛ばし、蹴り飛ばし、素手で弾き、闇で撃ち、噛み砕き…
六本の矢は、彼女にダメージというダメージを与えることなく散っていった。 それを見て、私は唖然とするしかなかった。彼女を……彼女の、狂気の笑みを見て。
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