天人と魔人

11/17
前へ
/1165ページ
次へ
「なぁんだ、もう終わりかよ」 遠くから、こえが聞こえる。それはどこか気落ちしたような、そんなもので…… 「ぐ、ぁ……かぁっ……」 なにか言っているが、それはみみに入ってこない。私も、かいふくするために力を回しているせいで、そちらに気を回す余裕もない。そこへ…… 「ぁ……」 からだを巡る力が、ましていくのを感じる。私のものではもちろん、ない。それは温かく、大きな力で、驚くほどに体が回復していくのがわかる。それが、精霊であるレイによるものだと気付くのにそう時間はかからなかった。 「お?」 動くようになった手を動かしているのを察知した少女は、愉快そうに笑う。まるで、遊びの続きが出来るぞと言わんばかりに。その余裕な態度、崩してやる……! 「お願い、レイ。力を貸して……」 私の呟きに呼応するように、体全身に力が流れていくのを感じる。回復もそこそこに、レイの力を借りて自身の力を底以上に引き上げる。立ち上がり、相手の様子に警戒を解かないままに構える。 「……精霊、って奴か。今度は楽しませてくれるんだろうな」 私が回復したことにも、力が底上げされたことにも驚きを見せず、首を鳴らしている。そうして私達は、暫しの間見つめ合った後…… 「-はぁっ!」 「-らぁっ!」 まるで示し合わせたようにその場から飛び出した私と少女は、お互いが接触する直前にお互いが拳を突き出す。それはお互いの拳と打ち合う……ことはなく、お互いの頬に打ち込まれる。 「ぐ、ぅ……!」 「ぬ、ぐ……!」
/1165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

268人が本棚に入れています
本棚に追加