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拳の衝撃に、吹き飛びそうになる。が、ここは踏んだり所だ。それは相手も同じらしく、お互いにその場に踏み止まったままだ。チラと睨むと目が合い、一瞬の硬直。その瞳には、ただ憎悪しかなくて……
硬直から抜け出すために、振り払う。振り払われた少女は、多少なり体勢が崩れている。この隙に、レイのおかげで底上げされた一撃を撃ち込んでやる!
「"光砲(ライトキャノン)"!」
懐に両手をかざし、そこに天力を集中。且つ、抵抗される前の、一瞬を争うスピードで構え……撃つ!強大な光の塊が、少女の腹にぶつかっていく。
「ぐ……おぉっ!」
これにはさすがの少女も堪えられなかったのか、呻き声を上げて吹き飛んでいく。ようやく一撃を、それも威力のある一撃を与えられたことに内心笑みを浮かべつつ、図らずも岩場の壁に激突した少女を見やる。
「はぁ、はぁ……」
さっきの打ち合い。仮とはいえ精霊の力を借りた状態でも、互角に拳を打ち合ってきた。恐ろしい力だ。とはいえ、これで少しは……
「キシシシ……いいねぇ、いいじゃねぇか。そうでなくちゃ」
そう言って立ち上がるのは、崩れた岩場をものともせずこちらを睨みつける黒い少女だ。倒しきれないまでもかなりのダメージは負ったはずと、そう思っていた。思っていたのに……それどころか、先程と変わらない余裕な笑みは何だ?
彼女の実力は既に、悪魔四神に迫るものがあるとは思っていた。だけどその闘争心は、むしろ奴らよりも…
「どうしたらこんなもんか!?あぁ!?」
その怒声にも思える叫びに、思わず一瞬体が固まってしまう。一体何が、彼女をここまで……
「もっとだ!もっと来て見せろ!その上で、ぶち殺してやるよ!」
その叫びは、魔力は、大気を、外部とを遮断するはずの結界をも奮わせているような錯覚を与える。いや、本当に震えているのかもしれない。
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