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今朝のことが頭の中でぐるぐるしている。授業中だというのにまるで頭の中に入ってこない。追憶世界、エテルという少年。そしてエテルが言っていたとある人。それが引っかかってしょうがない。
「小鳥ー」
「……あっ、はい!」
「ここ答えてみろ」
教師が黒板を指さす。じっと黒板を見つめていたのにもかかわらず内容がまるで入っていない。今日ずっとこの調子だ。友人にあいさつされてもワンテンポ遅れて挨拶を返す。そんな状況だ。
放課後、教師に呼ばれた。一日中気分が悪そうだったということで学年主任から話があるとのことだった。それから小さな相談室に行った。
彼女の名前は時崎 小鳥。年齢は十七。来年で高校三年になる。進路はいまだに悩んでいる。そして中学三年のある日まで彼氏がいた。その彼氏はある日行方不明となった。同時に父母が仕事で長期間いなくなり、現在独り身となっている。
「………雄一の行方不明の日が近いからそんな気分が悪いのか?」
「……たぶんそうです」
藍川 雄一。小鳥の彼氏だった人だ。今となっては父母共に行方不明となっている。その日は十月の二十五日。今日は十月の一日。その話は一度置く。そして雄一と彼の家族は行方不明になってから警察の方で調査はしたものの事故とみなした。そんな結果を小鳥は受け止めてはいたが、頭の隅では受け止めていなかった。
「………雄一のことは残念だと思うが…」
「………………もし先生が私の立場だったらどうしますか?」
「…そんなやつがいたという考えで済ませておく………いや、無理だな。私も小鳥と同じ考えでいるかもしれない」
先生がそんなことを言い出した。
「………アイツがどうして行方不明なんかになるのかは不明のまま。ただ真相を知れるなら知ってみたい」
「…先生、ありがとうございました」
一言あいさつし、相談室を後にした。
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