忠告 type『D』

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るという、病院側の思惑だろう。  多分、朝になったら別の患者が、俺が昨日の昼前までいたベッドに入ってくる。そのために俺は移動させられたのだろう。  奥のベッドにいた入院患者なら、そういう習慣がこの病院にあることを知っていてもおかしくはない。  しかし、何であの男は退院間際にあんなことを告げていったんだろうか。  もしかして、隣にいる俺の生活音がうるさかったとか、そういう理由か? でも、大部屋なんだからそういうのはお互いさまだし、耐えがたいくらいなら、一言言ってくれれば気をつけた。いびきとか、言っても仕方のないことの場合は…いや、それならここは四人部屋だから、他の人からも文句の一つくらい出ているだろう。  単純に俺のことが気に食わなくて、寝付けなくなるよう、ささやかな嫌がらせをしていったんだろうな。  そんなことをぼんやりと考えていた時だった。  ふいに、足元の空気が動いた。  部屋の扉が開く音はしなかったし、カーテンが開いた様子もない。でも確かに、何かが俺のいる一角に入って来た。そう感じた。  本能的に寝たふりをする。けれどそれで事態が流せる訳ではない。  閉じた目の前まで何かの気配が寄ってくる。その圧迫感に堪えかね、開いた俺の目に映ったのは、肘から先しかない手だった。  暗くて胴体が見えないとかじゃない。手だけがベットの脇に浮かんでいる。それが一瞬遠のいて、いなくなるのかと期待した俺の頬に拳の形でめり込んだ。  顔を殴られ、背を仰け反らせると、今度は腹にパンチが落ちてくる。いいや、腹だけじゃない。胸にも腕にも足腰にも、無数の衝撃と痛みが降り注ぐ。  のたうちながらうつぶせになれば、次は背や尻が標的になる。  痛い。痛い。なのに叫ぶこともできない。  助けを求めるように手をばたつかせると、腕だけがベッドの外へはみ出した。その時に、男に言われた言葉を思い出した。  ベッドの下に隠れて。  ベッドの下…そこに逃げ込めば助かるのか?  意識に残る言葉にすがりながら、力を振り絞ってベッドサイドへ転げ落ちる。その衝撃もかなりのものだったが、今は耐えて行動するのが先だ。  床に落ちても、なお追ってくる攻撃に耐えながら、俺はベッドの下へと逃げ込んだ。  嵐のような攻撃が止む。本当に助かったのかどうかはまだ判らないが、とりあえず攻撃は収まった。そう思ったら安堵して、
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