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少し紫がかったブラウン色の髪。
肩下まで伸ばしたその右サイドに色濃く入った深紅のメッシュをかきあげながら、拓海(タクミ)が言う。
「俺、悠里(ユウリ)が好きなんだ。」
まるで何でもないことのように、もう一人の同居人の名前を口に出されて。
動揺している間に、今度は俺に質問が振られた。
「千秋(チアキ)、おまえは?」
手ぐしでとかし終えた髪をハーフアップにまとめて、テーブルに置いていた眼鏡を掛けなおすと俺を見る。
レンズの奥で鋭く光る眼光が俺を捕らえた瞬間、ぎゅっと心臓がもがれたのがわかった。
「いないから。そういう人。」
完璧な作り笑いを顔に貼りつけて答える。
お前が好きだなんて
言えなかった。
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