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意味を持たない紙切れが、はらはらと拓海の足もとへ落ちていく。
「いいのかよ?俺にされても。」
この期に及んで躊躇う拓海を鼻で笑って挑発する。
「……今さらだろ?それに、悠里は女しかダメなんだろ?だったら、お前使うしかないじゃん。」
揺るぎない決意を見せつけて、拓海の髪へ指先を挿し入れる。
大きく目を見開いた後、冷静に俺を見つめる拓海。
「あとで泣くなよ。」
「ふっ……泣くかよ。」
後でなんて泣かない。
心はもう、とっくに泣いてる――。
眼鏡の奥の鋭い瞳が光を宿した直後、強引に自分の体がベッドへと押し倒された。
全身が羽布団に吸い込まれる中、俺の体をすっぽりと覆った拓海が、天井から見下ろしてくる。
ゆっくりと下降してきた拓海の唇が俺の首筋に吸い付いてきて。
それだけで、波紋のように全身が波立つのを感じた。
拓海の舌が俺の鎖骨を這っていく。
その舌先から伝わる拓海の熱さと、時折触れる眼鏡のフレームの冷たさ。
アンバランスな双方の温度をこの肌で感じて、拓海に触れられているという夢のような現実を実感する。
剥ぎ取られた衣服が床に落ちる度に、上昇していく自分の体温。
上半身すべてを剥き出しにされたところで、俺の肌をなぞっていた拓海の唇が、そっと浮き上がった。
俺の顔の正面まで這い上がると、落ち着いた声色で囁く。
「外して……。眼鏡。」
「………………。」
既に逆上せかけた頭を働かせて、拓海の眼鏡のフレームに手をかける。
ゆっくりとその耳からつるを外した瞬間。
一気に下りてきた拓海の唇が、俺の口を塞いだ。
イラスト:Ayumi様
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