好きと言えない恋愛事情

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重なった口先から、弾力のある拓海の唇の感触がダイレクトに伝わってくる。 初めて受ける、拓海のキス。 触れては離れて、角度を変えてはまた触れる。 その口づけが、あり得ないくらいに優しいから。 拓海の気持ちを勘違いしてしまいそうになる。 ただ触れるだけのキスを繰り返しているだけなのに。 回数を重ねるごとに、拓海を好きだという感情が、体の奥から競り上がってくる。 「―――っ、」 もう好きだって、言ってしまいたい。 好きだと伝えて俺の気持ちごと全部、拓海に飲まれてしまいたい。 けど…… 俺の本当の気持ちを知られたら、この体の関係さえも終わるような気がして。 吐き出しそうになる想いを、喉元で塞き止める。 好きだと言いたいのに言えない。 俺の気持ち全部伝えたいのに伝えられない。 溢れてくる感情に、もうコントロールが効かなくて。 強く目をつぶると、葛藤する苦しみが、涙になって目尻からこぼれ落ちた。 「……泣いてんじゃねーか。 やっぱり俺じゃ、無理なのかよ。」 「っ、ちがっ――――、っ!!」 否定しようと目蓋をあげた瞬間、視界に入ってきた拓海の表情に息が止まる。 「な、んで……」 なんでそんな、辛そうな顔……してんだよ? 拓海の瞳が、苦しさを訴えるように真っ直ぐに俺を見てくるから。 心臓が、ぎゅうっと限界まで締めつけられて。 重なり続ける視線に、どんどん視界が歪んでいく。
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