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君に贈る花
隣の家に同じ年の幼馴染がいる。
物心ついた時にはもう一緒に遊んでいたせいか、お互いに性別を意識したことはなかった。
いつも一緒でも恋愛感情なんて湧かない。周りも、仲良くしてると夫婦扱いでひやかしてきたけれど、俺と幼馴染の普段の態度を見て、こいつらはそういうふうじゃないんだなと判ってくれた。
周囲公認の兄弟みたいな二人。お互い、気になる相手ができたとかも平気で口走る。そんな流れで、ある日、幼馴染の失恋話を聞かされた。
相手は一つ上の先輩で、幼馴染が入った部活の部長。その人が引退することになり、思い切って告白してみたのだけれど、他に好きな人がいると断られたそうだ。
ちゃんと頭を下げてごめんて言ってくれたから、これできっぱり忘れられる。そう言って、涙を堪えて笑う様子が痛々しくて、なんとか慰めてやれないものかと思案した。
そして、考えに考えて、まがりなりにも女だから、花でもやれば喜ぶんじゃないだろうかと、花を贈った。
中学生の小遣いなんてたかが知れてるから、昔から好きだと言ってた花を一本だけ贈ったら、『何コレ』と笑った。
それ以来、お互いに色恋沙汰でつまづいた時には、相手に花を贈るというルールが俺と幼馴染の間にはできた。
彼女にフられた。そう言えば花を渡される。
彼氏と別れた。そう聞けば花を贈る。
そんなことを延々と繰り返し、そろそろ大学卒業も間近になった時、また、幼馴染に花を贈る必要ができた。
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