ワールド・エンド

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 ――もしかしたら、どこかの平行世界に来ちゃったのかもしれない。  そう話しながら少女はタイムマシンの開いたハッチから顔を出すと、キョロキョロと辺りを窺う。  天井があるのでどこかの室内のようだが……見渡す限り瓦礫の山だ。  続けて短く「大丈夫そう」と呟くと、ハッチ式タラップをポニーテールをフリフリと揺らしながら下りていく。 「マジかよ。……平行世界なんて初めてだぞ?」  少女に続いて、スラリと背の高い少年が姿を現す。  二人はメチャクチャに破壊された室内を見回すと、互いに見合って首を傾げた。  ――ここ、どこだろう?  そう尋ねる少女、名を吉川ヒナコ(よしかわひなこ)という。  真っ白な肌にモデル並みに整った美しい顔立ち。  ややアップ目に結んだロングポニーテールの下からチラチラと覗く白いうなじが艶やかな高校二年生だ。 「さあ? ……多分TT(タイムトラベル)室だろ? まあ荒れ果てて面影がないけどな」  ぶっきらぼうにそう答える少年は、進藤圭一(しんどうけいいち)。  短く「……うん」と答えるヒナコのクラスメートだ。  時は西暦二一〇〇年九月二十日。  TT室は、二人が通う高校にあるタイムトラベルを行うためにタイムマシンが設置されている教室の事だ。  今夜、二人は深夜の学校に忍び込み、無断でタイムマシンに乗り込んでタイムトラベルを行った。  だが、本来なら問題なく目的地に到達できるはずなのに、今回はいつもと違う。  大型のタルのような形をしたタイムマシンの室内に無数のスパークが走り、大きな衝撃ののち、この場所に到達したのだ。  もちろん、こんな廃墟のような所に来るつもりはなかった。 「ここは一体いつの時代なんだ?」  やや投げやりな態度の進藤に、ヒナコは何か考え事をするように腕を組みながら答えた。 「二〇九九年九月二十日。……ディスプレイにそう出てたよ」 「なにっ? 予定通りじゃないか! ……なのにこの荒れ果てようは何だ?」  進藤が声を荒げる。  一年前のTT室がこんなに荒れ果てているはずがないのだ。 「うん。到達目標の日時は予定通り。場所もTT室でここまでは合ってるわ。……なのに私たちの知る世界じゃない。つまり――」  ――タイムトラベル中に何らかの異常が起きて、どこかの平行世界に来てしまったのよ。  初めての出来事だった。
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