ワールド・エンド

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 そもそもタイムトラベル法において、平行世界への渡航は固く禁じられているのだ。  更に、未来への渡航も一切禁止。  法を犯せば重い懲罰が待っている。 「マズイな。バレたら牢屋行きだ」  そう頭をポリポリと描きながら歩き出す進藤の後を追いながら、ヒナコが話し掛ける。 「待って圭君。……ディスプレイに見たことの無い表示が出てたの」  ピタリと歩を止めると、進藤はヒナコの方に振り向く。  そして、「ん、何だ?」と短く問い掛けるとヒナコは小さな声で答えた。 「『TIME AXIS : Z001』」  初めて聞く響きに「ん??」と疑問符がいくつか浮かんだのが見えたのか、ヒナコがわかりやすく説明を始める。  そう、ヒナコは超に超が付くタイムトラベルマニア。  ヒナコの手にかかれば、どこぞのサーバーをハッキングしてタイムマシンの設計図を入手し、勝手に裏コマンドやら裏メニューを起動して違法トラベルを行う事などお手のものなのだ。 「『AXIS』……つまり時間軸ね。『Z001』っていう時間軸に来ましたって事よ。……ここは私たちが住む世界とは違う平行世界だわ。まあ、私も初めてだから自信がないけど、多分そう。……ちなみに元の時間軸は『C229』ね」  無断でタイムマシンを使用したり未来へ渡航したり、数多くの違法トラベルを行ってきたヒナコだが、それでも平行世界への渡航だけは自重してきた。  予測の付かない世界に跳んでしまうと、不測の事態に陥って命の危険にさらされる可能性があるからだ。  だが進藤は「なるほど、Zの世界ね」そんな感じで軽く考え、ウンウンと適当に首を縦に振る。  するとその反応を見てヒナコはちょっと意地悪そうに聞いてきた。 「……このZで始まる時間軸、つまりZの平行世界って何だか知ってる?」 「さあ? ……元の世界とは異なる別の世界だろ? それ以上に何か意味があるのか?」  フゥ、と一度息をつくと、ヒナコは遠い目をする。 「Zはね……、終わった世界だよ」  ――終わった……世界?  進藤は目を見開く。  ゴクリ。無意識に生唾を飲み込んだ。 「Zは人類が存続できない世界なの。……詳細は民間レベルでは公開されていなくてね。番号が49まである事と、その全てが終わった世界だって事しかわからないのよ……」
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