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「私と3人の歳の差凄いんですけど大丈夫ですかね」
「友奈ちゃんなら大丈夫やって!」
「言うて、私も人見知りですけど」
「……うん」
「不安しかない」
「せやなぁ」
「否定してくださいよ」
友奈はがっくりと肩を落とした。しかし、やらなければならないので、書類を手に取る。
「やってくれるんか?」
「やらないと駄目なんでしょ」
「すまんなぁ。任せるわ」
苦笑いを浮かべる荒城に、友奈は会釈すると踵を返して、扉に向かう。扉を開けて、部屋から出た。溜息を1つ。
一先ずは、穂村くんの所にでも行こうと、友奈は穂村の住むマンションへと足を踏み出したのだった。
******
咲本 友奈は、目の前の男を真剣に見つめた。困ったように眉尻を下げて、座布団の上で正座をしている男は、穂村 剛。友奈と同じ事務所に所属する俳優だ。もっさりとした黒髪と口元を覆う髭が、折角のイケメンを台無しにしている。
「もう1回言うよ?」
「……うん」
「一緒に頑張ろう」
「それは、その……」
歯切れ悪く返事をする穂村に、友奈は眉間に皺を寄せる。それを見た穂村は、居心地悪そうに視線を逸らした。
「俺は、もう……」
「分かった」
「え?」
友奈の言葉が予想外だったのか、穂村は目を真ん丸にして、友奈に視線を戻す。
「ゆっくり考えて欲しい」
「そう、だね。そうする」
「よし! 行こう!」
「え? 何処に?」
「この2人の所に」
友奈は、机に置かれた書類を人差し指でトントンと叩いた。意味を理解した穂村は、戸惑ったような顔をする。
「外に出るってこと?」
「勿論!」
「えっと、俺も?」
「大丈夫」
そう言うと、友奈は立ち上がり、掛けてあった帽子を掴んだ。それを穂村に被せて、にっかり、笑う。
「私が守ってあげるから」
友奈の言葉に、穂村は一瞬で顔を真っ赤にする。そして、慌てたように帽子を目深に被り直した。
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